第4回 アメリカではなぜ流通チャネルの地位が高いのか


アメリカ市場の決定権は流通チャネルにあり

流通チャネルとは

流通チャネルとは、製品のメーカーから最終顧客(消費者)に製品が届くまでの流通経路を言います。その中には、物流、倉庫、店舗などがあります。

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たとえば、メーカーがテレビを製造してお客さんに売ろうとする場合、電化製品の量販店に売って、その量販店が店舗でお客さんにテレビを売ることになります。このとき、テレビを運ぶ物流や、各店舗に置けないので在庫しておく倉庫や、店舗などがチャネルに含まれることになります。

こう言ってしまうとチャネルというのはとても単純に見えますが、実際にはそう簡単ではありません。物流一つをとってみても、メーカーの工場から大型店舗に大量のテレビを直送することもあれば、量販店の親会社が持っている倉庫に配送することもあります。さらに倉庫からは量販店に配送しなければいけません。もちろんテレビは小さな小売店でも売っているので、そこにどのような経路でテレビを送り届けるか、工夫が必要です。まさか街の電気屋さんにトレーラーを横付けするわけにはいきませんからね。

アメリカ市場の特殊性

流通チャネルの観点から見た時、アメリカという市場はとても特殊です。

まずは日本とアメリカを数字で比較してみます。

  • 広大な土地・・・日本の25倍
  • 多くの消費者・・・日本の2倍

ものを売る側にとって、消費者がたくさんいることは嬉しい事ですが、その消費者が日本の25倍の面積に散らばっていると考えると、商品を届けるのが大変なことは用意に想像がつくことでしょう。

メーカーからすると、このような広大な土地でテレビをいちいち売り歩いていたのでは大変です。効率的に物流を組むことも難しいし、かといってロジスティクスを外注したのでは高く着いてしまって、テレビの売値まで高くなってしまうでしょう。できれば、誰かひとりに売ったら、あとはその人が全米に効率よく売って欲しいものです。その誰かは他のメーカーのものも一緒に運んでいるはずなので、効率よくトラックを運用するなどしてロジスティクスの経費を低く抑えられます。アメリカ市場で「チャネル」といえば、この「誰か」を指すことがあります。これは、例えばWalmart(ウォルマート)やAmazon(アマゾン)、Best Buy(ベストバイ)といった会社です。

このように、広大な土地の事情と、購買力のある消費者が全土に点在している状況から、アメリカ市場の流通チャネル構造は特殊なものとなっています。

価格決定権とメーカー対応の実際

アメリカではこのチャネルに多くのメーカーが頼ったため、価格の決定権や商品構成の決定権はチャネルが強く持つようになりました。日本ではどちらかというとメーカーが価格を決定していますが、アメリカではそれがチャネルなのです。チャネルの販売作戦は、競合チャネルに勝つことと、大きな利益を上げるようにたてられます。この結果、必然的にプレイヤーの数は限られてきて、毎年の商戦ごとに大体の小売価格が決まってしまっています。例えば2014年のクリスマス商戦では、50インチのテレビは大体$800だ、などといったように。メーカーはそれに合わせるように商品を出せれば、商品を販売しやすくなるわけです。

さらにそれだけではなく、消費者の懐具合をレベル分けして、それに合わせたいくつかの価格帯の商品ラインナップをメーカーに要請します。メーカーは理由をつけてそのラインナップをなるべく揃えます。例えば、最高級のデジカメを$300とし、その下を$200、一番下を$150で、といったように。メーカーは、カメラの色と中のソフトウェアだけを変えて、わざと機能を落として安くしたデジカメをラインナップします。電化製品などはそういった工夫がしやすいですが、他の製品になるとなかなかそう簡単には行きません。したがってメーカーは開発段階からチャネルに要望を聞きに行くことになります。かなり消費者とは距離があるように感じますが、これがアメリカのチャネルの強さからくる構造なのです。

ぶつかりあう巨大流通チャネル

EC最強のAmazonと、実店舗最強のWalmart

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アマゾンとウォルマートといえば、アメリカの2大チャネルと言っても良いでしょう。もちろん続くターゲット(Target)なども無視はできませんが、EC対実店舗という構図ではやはりこの2社がよく比較されます。

実は販売規模では相当な差があって、アマゾンは2013年745億ドルであったのに対し、ウォルマートは同年4,691億ドルという状況です。しかしウォルマートのオンライン販売額はまだまだ多くはないため、今後アマゾンがじりじりと追い上げていく様相です。この根拠は、第1回でお話したオンライン市場の伸びにあります。

さて、ここで重要なのは、実質的な価格決定権を誰が持っているかということですが、これはまだウォルマートと言わざるをえないでしょう。やはり、販売額がすべてなのです。

チャネルに襲いかかった2大苦難とは

このような激戦の中、従来型小売店に2つの大きな壁が立ちはだかりました。

1つめは、不況です。2008年のリーマン・ショックでは、全てのチャネルが影響を受けました。もちろん株価や不動産価格のように暴落といった状況ではありませんでした(9月の米小売売上高 1.2%減 金融危機で消費抑制。日本経済新聞、2008年10月15日)が、いつも右肩上がりの消費が1.2%減となったわけです。

2つめは、ECの台頭です。特にAmazonの躍進は、電化製品や書籍など「どこで買っても同じ」ものを販売している小売店にとっては大打撃となりました。

この結果、1990年代に全米1位の売上を誇った家電量販店サーキットシティ(Circuit City Stores)や、全米2位の書籍販売店ボーダーズ(Borders)などが相次いで破綻してしまったのです。

巨人と対峙せず、ECで切り抜けよう

と、ここまで読んだ方は、「じゃあ素直にAmazonやWalmartで売ってればいいのかな」と思われたかもしれませんが、それは違います。

ポイントは、巨人と直接対決しないことです。アマゾンやウォルマートと直接対決の形勢になっていたサーキットシティやボーダーズは、これまでの実績や体力が会ったにも関わらず破綻してしまいました。逆に考えれば、アマゾンやウォルマートがカバーしていない市場を狙えば、その市場でのアマゾンになることは可能だし、そういった市場はまだまだたくさんあるはずなのです。これも第1回の記事で紹介ているとおりです。

アマゾンが存在する今現在のアメリカ市場でも、全小売販売額をオンライン販売が占める割合は11.6%にすぎないのです。しかも、ECであれば後発であっても十分に勝てるチャンスがあるのです。

アメリカやヨーロッパのチャネルを知り、その隙間をしっかりと見極めることが、ECサイト構築の第一歩となります。そしてECサイトを構築したあとも、さまざまなチャネルに気を配り、うまくすればそれらを利用しながら立ちまわることで、さらなる飛躍を見込むことも可能になってくるでしょう。